脳の働き
脳は大脳 、間脳 、小脳、脳幹に分けられます。脳を理解していくためには、脳の各機能の働きと脳神経の働きの2点を押さえると理解しやすいかと思います。
大脳
大脳の大脳皮質には脳葉と呼ばれる領域があり、①前頭葉 ②側頭葉 ③頭頂葉 ④後頭葉の4つの脳葉に分けられます。
①前頭葉
前頭葉は大脳の中心溝(ローランド溝)より前の部分を指します。
身体の四肢の運動や言語野の一つである運動性言語機能(ブローカー中枢)、人格などに関与しています。
短期記憶の処理は前頭葉で行われます。
前頭葉は3つに分類され、前頭連合野(人らしさ)、高次運動野(協調運動)、一次運動野(運動機能)に分けられます。
前頭連合野
人の大脳の約30%を占める部分になります。
前頭連合野は20歳前後に成熟してくる部分であり、子供は未成熟なため駄々をこねるなどの行動はこの前頭連合野が影響しています。そのため前頭連合野が障害されることにより子どもっぽさが目立つようになります。
前頭連合野は思考、判断、注意、計画、創造、意欲、行動・感情(情動)のコントロール、人格、コミュニケーションなどに影響し、抽象的なことや他の哺乳類とは違う”人らしさ(高次脳機能)”が影響するのは前頭連合野が大きく影響しています。
高次運動野
高次運動野は運動前野(運動の準備)と補足運動野(運動のプログラム)があり、一次運動野と協調して働いています。
高次運動野は運動の準備状態を行い、一次運動野が運動ニューロンに運動の指令を送る役割を担っています。
一次運動野
高次運動野から送られてきた情報から運動ニューロンに運動の指令を送ります。
そのことにより「錐体路(上位運動ニューロン)」に情報が伝わり、下位運動ニューロンを経て筋肉が実際に運動を実施していきます。ホムンクルスのような絵が用いられた図で説明されているのが一次運動野になり、手・足・顔・体幹などの活動に影響しています。
②側頭葉
聴覚・嗅覚・味覚や言語野の1つである感覚性言語機能(ウェルニッケ中枢)などに関与しています。
言語以外にも情動に影響しているのが側頭葉になります。
側頭葉は、一次聴覚野、聴覚周辺野、側頭連合野、ウェルニッケ野の4つの分けられます。
一次聴覚野
耳から聴覚に関する情報を受け取り、音として感じ取ります。
聴覚周辺野
一次聴覚野で受け取った聴覚に関する情報を過去の記憶と照らし合わせて、何の情報であったかを理解しています。
側頭連合野
聴覚に関する情報をもとに物体認識などを行なってます。
ウェルニッケ野
言葉を理解しています。
③頭頂葉
体性感覚(温度感/痛覚/触覚/深部感覚)・行動・計算・書字などに関与しています。
身体の位置や姿勢などの認識は頭頂葉で行われます。
頭頂葉は①体性感覚野と②頭頂連合野の2つに大別されます。
①体性感覚野
一次体性感覚野と二次体性感覚野があります。
②頭頂連合野
上頭頂小葉(体性感覚連合野)と下頭頂小葉(縁上回・角回)があります。
物体の認識や空間の認識を行なっています。
大脳皮質からの情報を受け取った情報を頭頂連合野で統合し認識していきます。
そこから前頭連合野へ情報伝達されます。
④後頭葉
視覚とその視覚の認識(視覚野)に関与しています。
後頭葉は一次視覚野(V1)から五次視覚野(V5)に区分され、一次連合野と視覚前野(二次視覚野:V2から五次視覚野:V5)に大別されます。
間脳
間脳に①視床上部 ②視床 ③視床下部に分けられています。
①視床上部
松果体があり、松果体からメラトニン産生します。
②視床
嗅覚以外の全ての情報感覚を集める中継地点があります。
③視床下部
自律神経の多くの中枢が存在します。生きていく上で欠かせない活動(睡眠・食欲・体温調整・水分代謝・性行動・情動など)の中枢が存在します。
バソプレシン(抗利尿ホルモン)やオキシトシン(子宮収縮・射乳促進)の産生に関わったり下垂体ホルモンの調整中枢が存在する。
小脳
小脳は眼球運動の調整、身体の平衡感覚、協調運動、筋肉の緊張など身体の動きに大きく関わっています。
自転車の動きは乗り慣れると自然に自転車を運転すること(運動の学習)ができます。このような運動(手続き記憶)は小脳が関わっています「身体で覚える」。そのため小脳が障害されると、運動障害や筋肉の緊張低下、振戦や眼振などが症状として出てきます。
脳幹
脳幹は①中脳②橋③延髄に分けられます。
①中脳
睡眠-覚醒サイクル、体温調整、視覚反射(*1)、筋肉の緊張を調整して運動の制御に関わる(黒質)。
黒質、動眼神経核、滑車神経核が存在します。この部位が障害されると除脳硬直が起こります。
*1:複雑な状況を無意識に詳しく確認しようとするときに起こる眼球の素早い動きのこと
②橋
顔面神経、聴神経、三叉神経、外転神経の神経核があります。
③延髄
迷走神経、聴神経、舌咽神経、舌下神経、副神経の神経核があります。また生命活動を行う上で必要不可欠な呼吸、循環、咳嗽、嘔吐、嚥下(唾液)、発汗などの中枢があります。