#204. 腸蠕動音(腸音)の聴診|温泉旅館で学ぶ腸の世界と臨床のリアル

🥢 腸蠕動音(腸音)の聴診|温泉旅館で学ぶ腸の世界と臨床のリアル

1. 腸の全体像を“旅館の見取り図”でつかむ

おにぎり先輩:「腸って、まるで温泉旅館みたいなもんだよ」
ちゃづけくん:「館内マップがあると迷わないやつですね?」

小腸ゾーン(長い廊下)

  • 十二指腸(フロント):胃からの荷物(食物)を受け取り、胆汁・膵液と混ぜる。
  • 空腸(ビュッフェ会場):栄養をどんどん吸収。
  • 回腸(お土産コーナー):ビタミンB12や胆汁酸を回収。

大腸ゾーン(温泉・宿泊エリア)

  • 結腸:水分を吸収し便を形成。
  • 直腸:チェックアウト前の一時保管所。

📌 医学的に
小腸:栄養吸収の主役(特に回腸はビタミンB12・胆汁酸の吸収)。
大腸:水分吸収と便形成、腸内細菌による発酵。

2. なぜ腸音を聴くのか?(目的と意味)

イメージ
腸音=館内BGM。元気すぎれば混雑、静かすぎれば休業中。
音の変化は「腸の働きの生中継」。

医学的に
腸音は腸の内容物が移動する際に出る液体やガスの音。
自律神経の働きや病態によって変化します。
手術後の回復や病気の進行度を判断する重要指標となります。

3. 音の種類と臨床例(比喩+根拠)

① 正常(落ち着いた営業中)

BGMが心地よく流れている。

  • 医学的:5〜30回/分。全象限で均等。
  • 臨床例:術後3日目、排ガスあり、正常音。→腸機能再開のサインとなります。

② 亢進(お祭り騒ぎ)

グルグル+カンカンと賑やか。

  • 医学的:高調音や金属音。閉塞初期や下痢で多い。
  • 臨床例:金属音+膨満+嘔吐。→閉塞性イレウス。
  • 根拠:腸が詰まりを押し出そうと収縮し、狭窄部を液体とガスが通過する時に共鳴音が出ます。

③ 減弱(休館モード)

BGMが途切れ途切れ。

  • 医学的:5回未満/分。便秘・脱水・薬剤性で多い。
  • 臨床例:術後1日目、オピオイド使用中で腸音2回/分。
  • 根拠:副交感神経抑制→蠕動低下します。

④ 消失(停電事件)

館内が真っ暗で静まり返る。

  • 医学的:5分間音が聴取できない(臨床では2〜3分聴取できないと消失と判断)。腹膜炎や絞扼性イレウスなどで緊急性高い。
  • 臨床例:無音+板状硬+発熱+低血圧。→緊急オペの検討となります。

4. “あるある”実習・新人ナースのつまずきポイント

  • 無音を1分だけ聴いて「消失」と判断 → 誤り(最低でも2-3分の聴取は必要)。
  • 高調音を“元気な証拠”と報告 → 実は閉塞初期であった。
  • 記録に「腸蠕動音あり」とだけ書く →残念ながら「 頻度・音質・部位」を書かないとあまり意味がないのです。

5. 記録のコツ(例+理由)

例1:正常
全4象限で約10回/分、均等な蠕動音。排ガスあり、腹部平坦。
理由:頻度・分布・付随症状をまとめると評価しやすい。

例2:亢進
右下腹部で高調金属音頻発、膨満+嘔吐あり。
理由:部位と音質を特定、関連症状で病態推測。

6. まとめ&明日からできる練習法

  • 腸音は「音の種類+背景病態」をセットで覚える。
  • 聴診は必ず全4象限+2分以上(消失疑い時)を徹底。
  • 音を聴いたら、必ず「なぜこの音か?」を自分に問い返してみましょう。

明日やってほしいこと

  1. 実習・勤務中に腸音を聴く機会を逃さない。
  2. 記録に音の特徴と理由を必ずセットで書く。
  3. 先輩の報告を聞く時も、背景の病態を想像するクセをつけましょう。

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