下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
下部消化管内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し直腸および大腸(S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸)の粘膜を検査します。便潜血陽性など大腸疾患が疑われる場合に行われます。内視鏡を用いて目視で検査を行うため、検査前の処置で大腸内にある便を綺麗し便のない状態にしておくことが大切になります。
肛門、直腸、大腸に炎症や潰瘍、ポリープや腫瘍などの観察をする場合に検査をします。ポリープや腫瘍に関してはその組織を採取し病変がないか検査します(生体検査)
炎症、潰瘍
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)、虚血性大腸炎、大腸憩室症(炎)など
ポリープ
大腸ポリープなど
腫瘍
大腸癌など
下部消化管が影響する症状の精査
血便、下痢や便秘、便が細くなっているなどの症状がある場合は検査を行い原因の精査を行います。下部消化管で病変が確認されない場合は上部消化管内視鏡検査も行われます。
内視鏡的切除
下部消化管に病変(ポリープや腫瘍など)を認めた場合は、内視鏡を用いて切除を行います。早期癌に対して有効で患者の身体的負担が少ない治療になります。切除後は切除した部位に人工的に潰瘍が発生します。そのため原則入院に出血や穿孔がないかを経過観察していきます。
禁忌:出血傾向がある場合。抗血小板薬や抗凝固薬を内服している場合。
ポリペクトミー
内視鏡を用いてポリープを切除します(良性腫瘍も含まれます)。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡を用いて粘膜を切除します。時間は15分から30分ほどです。1回で切除できない場合は複数回に分けて切除を行う場合もあります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡を用いて使用可能な高周波メスを使い、粘膜より下層の病変を剥がし取ります。時間は1時間から5時間で病変によって異なります。
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
超音波内視鏡 (EUS)を用いて腫瘍細胞を回収します。この回収された検体から腫瘍の診断を行います。
検査前の注意点
前日から消化の良いものを摂取
具のないお粥やうどんなどを前日から摂取し大腸に残渣がないようにしていきます。
前日の夜に下剤を内服
下剤の種類は医師により異なりますが、腸蠕動を促進する薬(センノシドやラキソベロンなど)を内服していきます。
当日の朝に下剤を内服
腸管洗浄液(モビプレップやニフレック)を内服し、腸管内にある残渣を排泄していきます。この処置をきちんと行えていないと下部消化管内視鏡検査を確実に行うことが難しくなります。
便スケール⑤であることを確認
①から⑤の大腸内視鏡検査における便スケールがあり、⑤淡黄色から透明色の便のカスがない状態、だと検査が行える状態なります。その他の場合は医師に確認をしながら追加で便処置(浣腸など)を行う場合があります。
検査着に着替える
肛門から内視鏡を挿肛するため、お尻の部分のみ切れ目が入っている検査着に着替え検査がスムーズに行えるようにします。必要最低限の露出で済むため羞恥心に配慮した検査着になっています。
休薬の確認
降圧薬や抗血小板薬/抗凝固薬、血糖降下薬などの休薬に関しては主治医に確認する必要があります。降圧薬は休薬せずに内服する場合がありますが、抗血小板薬や抗凝固薬、血糖降下薬に関しては休薬する場合が大半です。
点滴ルートの確保
補液を行いながら検査を行うため、静脈の点滴ルートを確保します。鎮静剤(ミダゾラムなど)を希望する場合や血圧低下時なども、この点滴ルートから薬剤を投与していきます。
検査後の注意点
覚醒スケールを用いて覚醒状況を確認(鎮静剤を使用した場合)
鎮静剤を使用した場合は検査後はふらつきが強いため転倒のないように必ず付き添います。検査後は30分間は安静にします。15分ごとに患者の覚醒度を覚醒スケールを用いて評価していきます。覚醒スケールが8点満点になった時点で帰宅できます。
検査後に腹部症状などが出現した場合は受診
吐き気や腹痛、血便などの症状が出現した場合はすぐに受診します。消化管出血などの合併症の可能性があります。
運転の制限(鎮痙剤、鎮静剤を使用した場合)
検査当日検査後の車の運転は控えます。
食事などの制限(切除や生検を行った場合)
ポリープや腫瘍、生検などを行った場合は刺激のある食事や飲酒、コーヒーなどの摂取を2〜3日控えます。
当日の運動の制限(切除や生検を行った場合)
ポリープや腫瘍、生検などを行った場合は当日の激しい運動は控えます。
合併症
内視鏡操作により消化管を傷つけることによる消化管出血や消化管に穴が空く穿孔などのリスクがまれにあります。