行動変容ステージモデル
人が行動を変え維持させるには6つのステージを通ると考えたモデルが行動変容ステージモデルになります。このモデルはプロチャスカが1970年台に提唱したトランスセオレティカルモデルの一部になります。何らかの理由で行動変容を促したい場面などで、対象がどの時期にいるのか、どのような関わりが望ましいのかを知ることができるため、実践で活用しやすいモデルになります。
行動変容の6つのステージ
行動変容には①無関心期(前熟考期)、②関心期(熟考期)、③準備期、④実施期、⑤維持期、⑥完了期の6つのステージがあります。最後の⑥完了期を除いて5つのステージと書かれている書籍もあります。これらの行動変容のプロセスは、①無関心期から⑤維持期へと順調に進むわけではありません。また維持期に入っていても、関心期や準備期に戻ってしまうこともあり得ます。そのためその人の状態に合わせて関わることが望ましくなってきます。
①無関心 | → | ②関心 | → | ③準備 | → | ④実施 | → | ⑤維持 | → | ⑥完了 |
①無関心期(前熟考期)
無関心期は6ヶ月以内に行動を変えようと思っていない人で、行動変容をするための「動機付け」がされていない時期になります。言い換えると問題や課題に対して事実を受け入れようとしたりはせず抵抗や否定をしていたり、意欲がない時期です。そのため行動変容をする気になれていないため「行動を変えたい!」と思える動機付けをして意欲的になれるように関わっていくことが望ましいです。また知識が十分になかったりするため、知識づけをしていくことも効果的です。
②関心期(熟考期)
関心期は6ヶ月以内に行動を変えようと思っている人で、無関心期とは違い、少しは健康に対する認識を持っています。しかし行動変容するメリットを感じていないため、具体的にいつから行動を変えていくか計画の見通しが立ちません。そのため今の状態を維持することのデメリットと行動を変えることによるメリットを伝えることにより、具体的な行動変容の計画の見通しが出ています。また理解はしているけど準備ができていない時期でもあるため、準備をできるように共に考えて準備できるように関わっていくのも効果的です。
③準備期
準備期は1ヶ月以内に行動を変えようと思っている人で、健康に対する認識が高まっていることから、あと一歩背中を押すことにより具体的に行動を変える時期になってきます。そのため具体的に行動を変える「きっかけ」を提供することにより行動変容につながってきます。具体的には、その人に口頭や紙などに変えようとすることを書いてもらうことがきっかけにつながります。ここで注意が必要なのは、その人自身が自分で納得して決めた行動の目標であるかが大切になってきます。
④実施期
実施期は行動を変えて6ヶ月までの人で、実際に行動変容をしていることから、その人の行動変容が続くように自己効力感ややる気を高めていくことが望ましくなってきます。また、その行動を続けていく上で支障となるものを考え、改善していくことも大切になってきます。
⑤維持期
維持期は行動を変えて6ヶ月以上の人で、実施期と同様に行動変容を継続できるように自己効力感ややる気を高めることが望ましくなってきます。また、今後行動変容が中断しないように続けていく上で支障となるものを考え、改善していくことも大切になります。
次のステージに進める関わり
次のステージにいくためには、思考や感情、認知を変えていく必要があります。それらの項目を具体的に表したものが下記の10項目になります。行動変容のステージと合わせて説明をしていきたいと思います。
①無関心期
(1)問題を意識化することや意識を高めます。(意識の高揚)
(2)問題に対する感情を明らかにしたり、体験します。(感情体験)
(3)問題が周りの人や環境に与える影響を考えていきます。(環境の再評価)
②関心期
(4)問題と自分との関係を見直していきます。(自己の再評価)
③準備期
(5)変化を決断していきます。(自己解放)
④実施期
(6)問題行動に関わる望ましい行動をしていきます。(逆条件づけ)
(7)問題行動の引き金を避けます。(刺激のコントロール)
(8)行動できたことに対して報酬を与えます。(強化マネジメント)
(9)他人の力を借りていきます。(援助関係の利用)
(10)問題行動が減るように社会的な方法を増やしていきます。(社会的解放)
①無関心期の関わり方(1)〜(3)
問題を意識化することや意識を高めます。そして問題を解決するために行動することがどのようなメリットがあるのかを知っていきます。また問題に対する感情を明らかにしたり、このままの状態ではまずいと思ってもらうように働きかけていきます。そして現状を維持する(問題を放置する)ことにより周囲にどのような影響があるかを知ってもらいます。
②関心期の関わり方(4)
問題と自分との関係を見直していきます。具体的には問題を解決しない自分をネガティブに捉え、問題を解決しようとしている自分をポジティブに捉えられるようにイメージしてもらうなどがあります。
③準備期の関わり方(5)
変化を決断していきます。変わらない自分と決別し、問題解決のためにその行動がうまく行えるという自信を持ちます。また行動を始めることを周囲の人に宣言していきます。
④実施期の関わり方(6)〜(10)
問題行動に関わる望ましい行動をしていきます。例えば、ストレスフルになると暴飲暴食することにより減量できないのであれば、ストレスがかかったときに運動をしてストレス発散をするなど、ストレスに対する対処行動を不健康な行動から健康的な行動へ変えていきます。またストレスフルな状況により不健康な行動を行ってしまうのであれば、ストレスフルな状況にならないように対処方法を考えていきます。時には、行動をかえることや行動を維持できるように周りからサポートを受けたり相談することも効果的になります。上記のことができるようになれば、プラスな行動をできた自分に対してご褒美を与えるようにしていきます。例えば、旅行や娯楽など不健康にならないご褒美であれば、行動できた自分にご褒美を与え、その行動が維持できるモチベーションを保っていきます。
参考(当サイトが加工/編集)
①厚生労働省 e-ヘルスネット 行動変容ステージモデル(2023/08/30)