アルツハイマー型認知症(AD)
大脳皮質に生じる進行性の脳疾患のことをアルツハイマー型認知症と呼びます。側頭葉(特に海馬)や頭頂葉の萎縮により症状が強く現れます。
症状
アルツハイマー型認知症の症状には様々なものがありますが、代表的なものを下記に記載しています。
記憶障害(短期記憶の障害)
海馬は短期記憶に関係しており、海馬が障害されることにより短期記憶が障害されます。
見当識障害
時間、場所、人物のいずれかがわからない状態のことをいいます。時間から順にわからなくなります。
高次脳機能障害
大脳皮質が萎縮することにより各脳葉の機能が障害され、高次脳機能障害が現れます。高次脳機能障害は外観から判断することが難しく他者から理解されにくい側面があり、「見えない障害」と表現されます。そのため高次脳機能障害の理解は認知症の理解に繋がります。
遂行機能障害
考え、計画し、実行する能力のことを遂行機能といいますが、その遂行機能が障害されることを遂行機能障害といいます。例えば、掃除や洗濯も遂行機能が求められるため、遂行機能障害になるとそれらが行えなくなります。
もの取られ妄想
物事を記憶するときに体験を通して「いつどこで何をしたか」を記憶するエピソード記憶が、アルツハイマー型認知症では欠落してしまうため、本人が棚に物を保管するために移動させても、その記憶が欠落することにより「物が盗まれた」となります。また「大事なものを保管する」という体験を忘れるため、そのことを補うために「盗まれた」と嘘の体験を作り上げてしまいます。これを作話(コルサコフ症候群)と呼びます。
その他の症状
自発性の低下、無関心、抑うつ状態
重症
無言、無動
検査
認知機能検査
・改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
日本で最も普及している認知機能検査で、見当識や記憶、計算、言語能力を評価していきます。このスケールは30点満点中、20点以下で認知機能低下(認知症の疑い)と判断されます。
・MMSE(Mini Mental State Examination)
国際的に用いられる認知機能検査で、見当識、記憶、計算、言語能力、図形能力を評価していきます。このスケールは30点満点中、23点以下で認知機能低下(認知症の疑い)と判断されます。
・時計描画検査(ODT)
視空間認知、構成能力や言語理解、記憶能力を評価できる検査になります。
頭部CT
頭部MRI
大脳皮質や海馬の萎縮が見られます。大脳皮質は認知機能に影響し、海馬は記憶力に影響します。ただ認知症初期はMRI画像は正常であることが多いです。
脳SPECT
頭頂葉や側頭葉に血流低下が見られます。頭頂葉は主に体性感覚、側頭葉は主に記憶や聴覚、言語を司ります。
PET
治療
コリンエステラーゼ阻害薬
ドネペジル塩酸塩、ガラクタミン臭化水素酸塩、リバスチグミンなどがあります。