肥満
肥満
体重が多いだけではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。具体的には「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI25以上の者」と定義されています。肥満の予防は健康になるため重要な意味を持ちます。
肥満度の判定にはBMIが用いられますが、同じBMIでもどこに脂肪がついているかで健康への危険性は大きく異なります。
肥満のタイプは「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられ、内臓脂肪型肥満の方が生活習慣病を発症するリスクが高いことがわかっています。
食習慣の変化や活動量の低下により、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、過剰分が体脂肪として蓄積され肥満につながります。肥満の家系においても、遺伝のみならず、家族の食習慣や運動習慣など共通した生活習慣が肥満の原因と考えられます。このように肥満の成因として重要なのは遺伝よりも生活環境および生活習慣となります。
疾患リスク
・糖尿病
・高血圧症
・心血管疾患
肥満の予防・対策
食生活の見直しと併せて継続的に運動を取り入れましょう。
具体的には、食事(エネルギー摂取)と運動(エネルギー消費)のバランス改善を改善していきます。摂取エネルギーを減らすことと消費エネルギーを増やすことで肥満の予防や改善につながります。しかし、極端な食事制限は長続きしない上、精神的にも悪影響です。特に、若い女性では、自分は太っていると思っている人のうち半数以上が標準体重以下との実態も明らかになっており、不必要なダイエットによる健康への弊害が懸念されています。
身体活動レベル別に1日に必要なエネルギーを把握し、食べすぎないように気をつけることはもちろん、意識しないうちに摂取エネルギーが過剰になる傾向がある間食やお酒などの量にも留意しましょう。食事のリズム(欠食、食事時間など)を見直すことも重要です。あわせて、運動を継続的に行うことが大切であり、そのためには、日常生活で普段行っている活動の中に運動を取り入れるようにすると最も効果的でしょう。
身体活動レベル* | 低い(I) | ふつう(II) | 高い(III) |
---|---|---|---|
1.50 (1.40-1.60) |
1.75 (1.60-1.90) |
2.00 (1.90-2.20) |
|
日常生活の内容 | 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 | 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合 | 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合 |
*代表値。( )内はおよその範囲。
肥満の分類
食生活を取り巻く社会環境の変化、食生活の欧米化や運動不足から肥満の人が急激に増えています。
肥満度の判定には、国際的な標準指標であるBMI(Body Mass Index)=[体重(kg)]÷[身長(m)2]が用いられています。
男女とも標準とされるBMIは22.0ですが、これは統計上、肥満との関連が強い糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)に最もかかりにくい数値とされています。
BMI(kg/m2) | 判定 | WHO基準 |
---|---|---|
< 18.5 | 低体重 | Underweight |
18.5 ≤ BMI < 25.0 | 普通体重 | Normal range |
25.0 ≤ BMI < 30.0 | 肥満(1度) | Pre-obese |
30.0 ≤ BMI < 35.0 | 肥満(2度) | Obese class I |
35.0 ≤ BMI < 40.0 | 肥満(3度) | Obese class II |
40.0 ≤ BMI | 肥満(4度) | Obese class III |
注1)ただし、肥満(BMI≥25.0)は、医学的に減量を要する状態とは限らない。
なお、標準体重(理想体重)はもっとも疾病の少ないBMI22.0を基準として、標準体重(kg)=身長(m)2×22で計算された値とする。
注2)BMI≥35.0を高度肥満。
ただし、BMIは身長と体重から単純に計算された値ですので、これだけでは筋肉質なのか脂肪過多なのかはわかりません。
また、BMIは標準でも筋肉や骨と比べて脂肪が多い、つまり体脂肪率が高い状態(隠れ肥満)が最近の若い女性に多く見られています。
近年、体脂肪率も測定できる体重計が市販されていますが、機種によって推定方法や判定基準が異なることがあり、体脂肪率の正確な測定は困難です。
一定の誤差があることを理解したうえで、あくまでも目安のひとつとして、測定値の増減の傾向を把握してみましょう。また、同じBMIでもどこに脂肪がついているかで健康への危険性は大きく異なってきます。
筋肉の内側の腹腔内に脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の人は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを発症する確率が高くなります。一方、腰まわりや太ももなど下半身を中心に皮下脂肪が多く溜まっているものの内臓脂肪は少ない「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」の人は、こうした症状はあまりみられません。
2008(平成20年)年度から開始された「特定健診・特定保健指導」の主軸となっている「メタボリックシンドローム」とは、「内臓脂肪型肥満」の人が高血糖・高血圧・脂質代謝異常のうち2つ以上を併発している状態を指します。
A: 腹囲 | ≥ 85cm(男性) ≥ 90cm(女性) (内臓脂肪面積 男女とも≥100cm2に相当) |
---|---|
B: 上記に加え、以下のいずれか2項目以上(男女とも) | |
1.中性脂肪 | ≥ 150mg/dl かつ/または HDL < 40mg/dl |
2.血圧 | 収縮期血圧 ≥ 130mmHg かつ/または 拡張期血圧 ≥ 85mmHg |
3.血糖 | 空腹時血糖 ≥ 110mg/dl |
肥満の定義(こども)
BMIは成人にのみ用いられる指標であり、学童児(6-18歳)の肥満の判定には肥満度が用いられています。
「小児肥満症診療ガイドライン2017」では、「肥満度が+20%以上、かつ体脂肪率が有意に増加した状態(有意な体脂肪率増加とは、男児:年齢を問わず25%以上、女児:11歳未満は30%以上、11歳以上は35%以上)」を肥満と定義づけています。
肥満度(%) = 100 × (現在の体重‐標準体重)/標準体重
引用:厚生労働省 e-ヘルスネット 肥満と健康 (上記より当サイトが加工・編集2021/12/20)