脳梗塞
脳の動脈が閉塞することにより脳の機能が障害された状態のことを脳梗塞といいます。脳梗塞により麻痺や呂律困難、めまいなどの症状が起こります。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を含めて脳卒中と呼びます。寝たきりの原因の第2位が脳卒中であることから、予防と早期発見、早期治療が重要になってきます(2022,参考①)。
脳梗塞の分類
脳梗塞は病気の型(A)や発生機序(B)によって分類が異なります。それぞれを理解することにより病気が見えてきます。
A 病気の型による分類は3つあります。①アテローム血栓性脳梗塞 ②心原性脳塞栓症 ③ラクナ梗塞
B 発生機序に関する分類は3つあります。Ⅰ血栓性 Ⅱ塞栓性 Ⅲ血行力学性
A 病気の型による分類について説明をしていきます。(かっこでBの発生機序を表記)
①アテローム血栓性脳梗塞(Ⅰ・Ⅲ)
頸部から脳にかけての比較的大きな動脈がアテローム(粥腫:脂肪の塊のようなもの)により狭窄・閉塞します。
主な原因は動脈硬化になります。
②心原性脳塞栓症(Ⅱ)
心房細動(Af)などの不整脈が原因でできる心臓内の血栓により脳の血管が閉塞します。
危険因子→心房細動(Af)などの心臓疾患
③ラクナ梗塞(Ⅰ・Ⅲ)
脳の大きな動脈から分岐する細い動脈が壊死・閉塞します。
検査
CT検査
迅速に撮影できるのがCT検査の利点で、発症数時間以内の脳梗塞の初見が見られることがあります(early CT sign)。しかし、CT検査で脳梗塞初期の初見を認めることは難しいです。そのためMRIと併用して診断に用いられます。
MRI検査
脳梗塞初期の梗塞巣を見つけるのが得意です。しかしペースメーカーを挿入しているとMRI検査ができないデメリットがあります。
CTA検査
造影剤を使用し、CTを用いて血管を映し出します。造影剤の使用やCTによる被曝がありますが、MRAより時間が短く、より精密な画像が得られます。
MRA検査
MRIを用いて脳の血管を映し出します。CT検査と比較して侵襲が少ない反面、CT検査より時間を要します。
その他(血管病変に対する検査)
頸動脈超音波検査
プラークの性状や狭窄度の評価、血流状態を把握することができます。
治療
①血栓溶解療法(rt-PA) :発症から4.5時間以内
お薬により血栓を溶かしていきます。このお薬の作用機序は血栓にあるプラスミノゲンを活性化させ、プラスミンへと変換します。その変換されたプラスミンはフィブリン(血液凝固因子)を分解し血栓を溶かしていきます。その結果、血栓により閉塞した血管が再開通します。しかし大きな血栓は溶けないこともあります。そのため血栓溶解療法での再開通率は約40%と言われています。このお薬による合併症は出血性梗塞による頭蓋内出血が挙げられます。
②血栓回収術
脚の付け根からカテーテルを入れ、脳の詰まっている血管部分までカテーテルを挿入し血栓を回収していきます。血栓回収術には以下の2種類の方法があります。血栓回収術の回収率は約80%と言われています。適応は発症から8時間以内ですが、事例によりその限りではありません。
1)血栓を砕きながらその血栓を吸引していく方法
2)筒状の網(ステント)を血栓に絡め回収する方法
③抗凝固療法
脳梗塞の再発予防(再梗塞の予防)のために血液をサラサラにする薬を内服します。血液をサラサラにする薬は大きく分けて2種類あります。
1)抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)
何らかの原因により血管の内側が傷ついたときに、一次止血を行うのが血小板です。この血小板に対して作用するのが抗血小板薬になります。血液を固まりにくくすることで血栓ができるのを予防していきます。
2)抗凝固薬(ワーファリン、イグザレルトなど)
血小板による止血は応急処置で、より強固な止血が二次止血になります。二次止血を行うのが、フィブリンと言われる血液凝固因子です。血液凝固因子は血小板を覆うように作用し、より強固な止血をすることができます。この血液凝固因子に作用するのが抗凝固薬になります。
④アブレーション治療(心房細動が原因の脳梗塞に対して)
脳梗塞の原因が心房細動の場合、心房細動の原因である異常な電気信号が心臓に伝達しないように、カテーテルを用いて心筋組織を焼灼することで心房細動を治療します。
⑤脳保護薬(エダラボン)
フリーラジカルを除去することにより細胞傷害から脳を保護します。
⑥抗脳浮腫薬(グリセロール)
血液の浸透圧を上げることにより、脳の組織に駐留した水分を血液中に移動させ、脳浮腫を改善していきます。
ケア
脳梗塞を予防していくためには、血管と血液の状態を改善していく必要があります。
脱水予防
目標は1〜1.5Lの水分を摂取していきます。脱水になると血液の中の水分が失われ、ドロドロとした血液になります。そのことにより血液の流れが悪くなり、血の塊(血栓)ができやすくなります。そのため意識的にこまめに水分摂取を行い脱水にならないようにしていきます。普段の生活で排泄や発汗などにより2.5Lもの水分が失われていきます。食事などで補う水分が1.3Lほどであるため、残りを水分補給していきます。ちなみにのどが乾いた状態はすでに脱水の状態であり、のどが乾かないように水分摂取をしていきます。
食生活の見直し
脳梗塞の原因である危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化症が挙げられます。
・高血圧に対する食事
高血圧の食事で大切になるのが減塩になります。
・糖尿病に対する食事
糖尿病の食事で大切になるのが糖質(血糖)になります。
・脂質異常症に対する食事
脂質異常症の食事で大切になるのが脂質(コレステロール)になります。
運動習慣の見直し
運動をすることにより全身の血液の流れが改善します。また運動の効果により血管が拡張され強くしなやかな状態になります。詳しくは「運動の効果」を参照ください。
参考(当サイトが加工編集)
①厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況(2023/07/05)
②厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況(2023/07/05)